【2024年4月景品表示法改正】古物商の「買取」も規制対象に

令和6年4月18日に「景品表示法の運用基準」が見直され、古物商の「買取」も景品表示法の対象になります。今までグレーゾーンになっていたWebサイトなどの広告が、景品表示法に抵触する恐れが出てきました。

運用基準の変更により、多くの企業が対応を迫られています。本記事では景品表示法とは何か、古物商が注意すべき不当表示についても触れていきます。

景品表示法とは

景品表示法の正式名称は「不当景品類および不当表示防止法(昭和37年法律第134号)」です。不当な顧客取引を禁止し、一般消費者が商品やサービスを自主的・合理的に選べる環境を保護することを目的としています。

景品表示法の主な仕組みは2つあります。ひとつめは、商品やサービスの品質・内容・価格等を偽って表示させないこと(不当表示の禁止)。ふたつめは、過大な景品類の提供を防ぐために、景品類の最高額を制限すること(景品類の制限及び禁止)です。

従来までの景品表示法:古物商の買取は対象外

景品表示法では、商業、工業、金融業などの業種が法令の対象です。消費者庁が発表している従来の運用基準によれば、古物営業の「買取」は景品表示法の取引には含まれませんでした。例え、買取に景品類(査定額アップやエコバックなど)が付属していたとしても、景品表示法には該当しません。

改正後の景品表示法:古物商の買取は対象になる

令和6年4月18日に見直された「景品類等の指定の告示の運用基準について」では、古物営業の「買取」は下記の通りに報告されています。

<古物商「買取」の扱い>

“自己が一般消費者から物品等を買い取る取引も、当該取引が、当該物品等を査定する等して当該物品等を金銭と引き換えるという役務を提供していると認められる場合には、「自己の供給する役務の取引」に当たる。(引用:消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」)”

査定や鑑定などをして品物などを買取する取引は、景品表示法の対象になりました。買取サービスの全てが「役務の提供」に該当するかは、個別のケースに応じて判断されるようです。

景品表示法改正の経緯:古物商が景品表示法に該当する理由

近年、環境・世界情勢の変化により、リユース業界は拡大しています。多くの買取サービスが身近な存在になりました。しかし、身近であるからこそトラブルは絶えません。

  • 「広告に表示した買取金額と実際の買取金額に大きな差がある」
  • 「どんなに壊れていてもゼロ円で買取すると謳っていたけれど、有償処分を進められた」

などの報告がされています。消費者の声を受け、消費者庁では「景品表示法検討会」が開催されました。

<消費者からのトラブル事例>

“〇折込広告に買取実績として着物が50万円などと記載してあったので、不要な着物を買い取ってもらおうと来てもらった。一枚一枚査定をしていたので一枚当たり1万円くらいにはなるのかと思っていたら、100円から高くても1,000円ほどで、数十点あったのに全部で9,000円ほどにしかならなかった。

〇ヒーターの処分をするため、インターネットで買取業者の広告を見て電話をかけ、家に来てもらった。広告には「家にあるものなんでも、壊れていても負担ゼロ」と書いてあったが、「古いので買取できない、逆に処分費が必要だ」と言われた。その後「何か貴金属を買取に出してくれたら処分費は無料で良い」と言われた。”(引用:消費者庁「景品表示法検討会(令和5年1月13日)【参考資料6】買取りサービスに係る消費者トラブル事例」

景品表示法検討会の結果、事業者が一般消費者から物品等を買取する取引は、役務を供給しているとの見解です。古物商の買取は、景品表示法の規制対象になると結論づけられ、運用基準が見直されました。

景品表示法に該当する行為

景品表示法では、次の2点が不当に顧客を誘引する表示とされています。

  • 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
  • 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

景品表示法の運用基準が見直され、古物商はどのようなことに気をつければいいのでしょうか。ここでは、基本的な考え方について触れていきます。なお、個別のケースについては、所轄の警察に問い合わせてください。

優良誤認表示

優良誤認表示は、自社の商品やサービスの内容が他社と比較して著しく優れていると誤認される表示のひとつです。一般消費者が自主的・合理的に商品やサービスを選べない状況を作り出します。

実際の広告では「他店よりも自社のほうが高額買取」「壊れていても何でも買取」「査定後スピード振込」などが、不当表示に該当する場合があります。裏付けとなる合理的な根拠がなければ、摘発された際に対応が難しくなるでしょう。

有利誤認表示

有利誤認表示は、商品・サービスの内容ではなく、商品やサービスの価格等の取引条件に関する表示です。競争相手の買取価格と比較して、自社の商品価格が著しく有利だと誤認される広告などが該当します。

例えば、Webサイトで見かける「買取比較、A店:3,000円、B店:2,500円、当社:4,000円」のような表記にも注意が必要です。競争店の買取価格を正確に調査せずに表示する場合は、不当表示になる恐れがあります。

さらに「期間限定のキャンペーン」と謳いながら、同じキャンペーンを繰り替えている行為も景品表示法違反の可能性があります。「期間限定」の表示が実際とは異なり、不当に顧客誘導している行為と捉えられることがあるようです。期間限定などの時期を謳う場合は、期限を守って運用しましょう。

最上級表現

最上級表現は、優良誤認表示・有利誤認表示のどちらにも当てはまる可能性がある表現方法です。

「No.1」「業界最大」「日本初」など、自社が最も優れているという表現が該当します。インパクトがある表現方法ですが、明確な裏付けがなければ、一般消費者を欺く行為と捉えられてしまうリスクが高い表現方法です。

集客のために、多くの買取業者がWebサイトで使用するワードではないでしょうか。

「業界No.1の買取価格」「利用しやすいランキングNo.1」「業界最大のサービス」などが対象になる可能性があります。ただし、最上級表現は「客観的な調査に基づくもの」「調査結果を正確にかつ適正に引用」していれば、問題がないとされています。

古物商も景品表示法を把握してトラブルを回避

令和6年4月18日に景品表示法の運用基準が見直され、古物営業での買取も対象となります。今までの流れで不当表示をおこなってしまえば、摘発され課徴金を納付しなくてはいけません。

顧客からの信頼を失う可能性があるため、一般消費者に誤認されるような不当表示は避けるべきでしょう。インパクトがある表示をする場合には、明確な裏付けを確認してから表示してください。自社の表示が景品表示法に該当するかわからない場合は、所轄の警察に問い合わせてみましょう。

参考資料

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