「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」の施行に伴い古物営業法の一部が改正されました。
インターネット販売における古物商の標識設置に関するルールが変更されています。
そこで本記事では、改正内容の詳細と古物営業法改正に関するよくある質問などについて解説します。
古物営業法におけるインターネット販売のルール「標識の設置」
古物営業法では、古物商は営業所ごとに標識を設置することが義務付けられています。標識には以下の3点の事項である「氏名等」を掲載する必要があります。
- 氏名又は名称
- 許可をした公安委員会の名称
- 許可証番号
“第十二条 古物商又は古物市場主は、それぞれ営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない。(古物営業法第12条)”
「標識」の様式については、古物営業法施行規則第11条、別記様式第13号に定められています。詳しくは、警視庁の公式サイトをご一読ください。
インターネット上でのみ販売をおこなう場合においても例外規定はなく、氏名等に加えて「取り扱う古物に関する事項」についても、営業所と定めた場所に標識に掲載して掲示する必要があります。
【一部改正】ウェブサイト上に氏名等の掲載義務「対象を原則全てに拡大」
本改正の大きなポイントは、ホームページ利用取引をおこなっているか否かに関わらず、除外規定に該当する場合を除き、古物商は原則としてウェブサイト上に氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称及び許可証の番号を掲載することが義務付けられたことです。
改正前は、営業所で古物営業をおこなっていてもインターネットを利用した営業をしていなければ、ウェブサイト上に氏名等を掲載する必要はありませんでした。改正後は原則すべての古物商事業者に掲載が義務付けられました。
古物商が管理する「全てのサイト」が対象
「古物商が管理する全てのウェブサイトが対象」という点に注意が必要です。
古物に関する情報がない「会社のホームページ」や、古物の取引とは無関係の「新品商品の販売サイト」であっても、氏名等の掲載義務は免除されません。
氏名等掲載義務の免除要件について
以下の場合は、氏名等の掲載義務が免除されます。
- 常時使用する従業者の数が5人以下の場合
- 当該事業者が管理するウェブサイトを有していない場合
従業員とは
氏名等の掲載義務免除要件にある「従業者」とは、古物商の業務に従事する者を指します。
古物商の指示の下、古物の販売等を行う者は従業者に該当します。法人の役員や個人事業主は、ここでいう従業者には該当しません。
古物営業に従事しないその他の従業員であっても「従業者」に含まれるため注意が必要です。例えば、古物営業に従事しない他の事務員については従業者に含まれると解されるでしょう。気になる方は、所轄の警察に確認してみてください。
氏名等掲載義務免除の例外
インターネットで取引をおこなう古物商は「特定古物商」と呼称されるようになりました。掲載義務免除規定に該当する場合であっても、特定古物商に免除規定は適用されず、氏名等及び「取り扱う古物に関する事項」についても掲載しなくてはなりません。
ウェブサイトを自社で管理しておらず、他社に運営委託している場合でも掲載義務の対象となるため、注意が必要です。
古物商番号のない古物売買による問題
近年、古物商番号を持たない個人による古物売買が問題視されています。
メルカリなどのフリマアプリの台頭で、個人間でも中古品の売買をおこなうことが容易になりました。本来であれば、個人売買であっても中古品を売買するときには古物営業の許可が必要ですが、実際には古物営業の許可を受けずに売買がおこなわれているケースが非常に多いというのが現状です。
古物の売買は古物営業法により規制されています。
“第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。(古物営業法第1条)”
古物の売買は、一歩間違えれば盗品や犯罪被害品を社会に流通させてしまう危険性もはらんでいます。
そのため、無許可で古物の売買をおこなっている場合、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金という非常に重い罰則を課されることがあります。
フリマアプリの取引の増加と共に警察による摘発も増えているため、心当たりがある場合や該当するかしないかが不明な場合は、古物売買についてのルールを改めて確認してみるようにしましょう。
掲載しない場合の罰則
氏名等の掲載義務に違反した場合、古物営業法第35条第2項に基づき10万円以下の罰金が科せられる場合があります。
“第十二条 古物商又は古物市場主は、それぞれ営業所若しくは仮設店舗又は古物市場ごとに、公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない。
2 古物商又は古物市場主は、その事業の規模が著しく小さい場合その他の国家公安委員会規則で定める場合(その者が特定古物商である場合を除く。)を除き、国家公安委員会規則で定めるところにより、その氏名又は名称、許可をした公安委員会の名称及び許可証の番号(次項において「氏名等」という。)を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供しなければならない。
3 特定古物商は、前項の規定により氏名等を公衆の閲覧に供するときは、氏名等と共に、その取り扱う古物に関する事項を公衆の閲覧に供しなければならない。(古物営業法第12条)”“第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
二 第八条第一項、第十一条第一項若しくは第二項又は第十二条の規定に違反した者(古物営業法第35条第2項)”
古物営業法改正に関するよくある質問
今回の法改正に関し、特に多く寄せられる質問を紹介します。
ウェブサイトはSNSでも問題ありませんか?
すべての古物商は、氏名等をウェブサイトに掲載することが義務付けられました。ただし、ここでいうウェブサイトにはSNSは含まれません。たとえSNSで掲載したとしても、義務を履行したことにはなりません。
氏名を掲示していれば、標識はなくてもよくなりますか?
古物営業法一部改正により、ウェブサイト上への氏名等の掲載義務の対象が原則全てに拡大されましたが、氏名等を掲載さえすれば標識の掲示義務が免除される訳ではありません。標識を営業所等の見やすい場所に掲示する義務は、これまでと変わりません。
特定古物商と古物商の違いはなんですか?
古物営業法に規定される古物を業として売買または交換する業者・個人が古物商に該当します。すべての古物商は、自身又は自社の管理するウェブサイトに、氏名等を掲載する義務が課せられます。
古物商のうち、インターネットを介して古物の取引を行う業者・個人が特定古物商に該当します。特定古物商は、氏名等に加えて「取り扱う古物に関する事項」についても掲載義務があります。
“第八条の二 公安委員会は、第五条第一項第六号に規定する方法を用いる古物商(第十二条第二項及び第三項において「特定古物商」という。)について、次に掲げる事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供するものとする。
一 氏名又は名称
二 第五条第一項第六号に規定する文字、番号、記号その他の符号
三 許可証の番号(古物営業法8条の2)”
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