真贋鑑定の難しさ・正確性について

多くのフリマアプリやネットオークションは一般の方が簡単にインターネットでの売買を楽しめるようになりました。しかし、偽物を出品する問題も発生しているのが現実です。

各メーカーも事件に発展すれば、運営方法に疑いをかけられることになります。偽物の出品は避けたいところでしょう。

「鑑定機関に相談すればいいのでは?」と簡単に考えている方も多いかもしれません。ブランド品、美術品、骨董品などの真贋の判断は大変難しいものです。確実に真贋を見分けられる鑑定機関は、どれほどあるのでしょうか。

本記事では「鑑定機関の真贋判定の正しさ」について触れていきます。鑑定業務がどれだけ繊細なものかを知っていただければ幸いです。

フリマアプリ、オークションで偽物を出品するのは禁止されている

インターネット上のフリマサイトやオークションでは「正規品かどうかわからないもの」を出品するのは、禁止されています。しかし、市場全体の商標権侵害事犯の検挙は、後を絶ちません。

偽物や模造品の出品は、商標法、意匠法、著作権法などに抵触する恐れがあります。これらの違法行為は重罪です。「懲役10年以下、罰金1,000万円以下」の刑罰が科される可能性があります。

個人の利益を得たいだけの不純な動機で、真贋の判断がつかないまま出品するのは、避けるべきでしょう。

真贋を見極めるのは簡単ではありません

技術の進歩でより精巧な偽物が紛れているケースもあり、真贋判定の難易度が高まってきています。真贋鑑定をしたからといって、必ず真贋判断できるわけではないのが現状です。ここでは、各代表的な品物の真贋判定の難しさに触れていきます。

ブランド品

メーカーから発売されているブランド品は、比較的情報が手に入りやすいため、真贋の判断はしやすい部類に入ります。

業者によっては、AI判定機器を導入し、高い精度で真贋の判断をしているとのことです。査定員が不慣れでも十分な成果を上げられるでしょう。

しかしながら、AI判定機器は、正規品と偽物の違いを比較して真贋の判断をします。製造工程での品質のばらつきで、判断を誤るケースもあるようです。

美術品や骨董品

美術品や骨董品などは、作品の情報や来歴が明確にならない場合が多いのが特徴です。署名、刻印、落款から制作時期を推察したり、科学鑑定で材質やルーツを特定したりして真贋を判断します。

来歴とは、物品が「誰に・いつ」作られたのか、どうやって「依頼人が手に入れたか」の履歴です。繊細で手間がかかる業務ですから、一般的に2〜3ヶ月程度の長い鑑定期間が必要です。

そのため、その道に精通した鑑定人であったとしても美術品や骨董品の真贋判断は、非常に難しいものとなります。たとえ、鑑定書があったとしても業者によっては再鑑定をおこなうほど、真贋判定は慎重におこなわれることもあります。

ジュエリー

ジュエリーは、古くから需要が高く、偽物も多く流通してきました。その背景から、多くのジュエリー鑑定機関が存在しているのが特徴です。

ジュエリーによっては、真贋鑑定がしやすいものもあります。しかし、昨今の技術向上に伴い、鑑定機関・鑑定人でも見極めが難しいといわれるほど、精巧な偽物が多く流通しています。

査定と鑑定の違い

査定と鑑定では、明確に意味が違います。査定とは「買取価格を決めること」、鑑定は「真贋を判断すること」。一般の方がイメージしている鑑定は「査定」であることがほとんどです。

査定の中に一部鑑定の要素が入る場合はありますが、業者の知識でできる範囲で鑑定をするため、不確実性が高まります。そして、重要なのは「確実に本物である」と言い切ることができるのは、それを作ったメーカーのみという点でしょう。

査定はおこなうが、鑑定はおこなわない業者もある

美術品や骨董品などの真贋の判断がつかない物品は、査定はおこなっても、真贋鑑定をしない業者がほとんどです。

古物商は警察と連携し、盗品や偽物の可能性がある物品の流通を防ぎます。買取業者で、真贋の判断がつかないような物品は「査定不可」の対応をするしかありません。価値があったとしても査定ができない場合があることは、留意しておきましょう。

買取業者での査定に納得がいかない場合は、真贋鑑定を希望すれば、鑑定機関へ手続きを代行してくれます。

鑑定機関の現状

国内での鑑定は鑑定機関、あるいは遺族や有識者による鑑定人が請け負っています。ブランド品、ジュエリー、美術品すべてに精通している機関はありませんから、ジャンルを絞るのが一般的です。特に不確実性が高い美術品や骨董品に対しては、作家別に鑑定機関が設けられることもあるほどです。

海外品の鑑定は、さらに複雑です。海外鑑定機関は、国内のように整備されていません。一人の作家に対して複数の鑑定機関があり、異なる評価結果になる場合もあるようです。

業者によっては、国内でもある程度流通している有名作家だけ(例:絵画では、ヴラマンク、カシニョール、ビュッフェなど)を対応するところもあります。

【悪質な真贋詐欺】フリマアプリで当協会の名を無断利用して出品

インターネット上のショッピングサイト(オークション、フリマアプリを含む)で、「品物を当協会が真贋判定をした」と当協会の名を悪用して、出品する悪質な事例がありました。

繰り返しになりますが、当協会は、ブランド品、美術品、骨董品などの真贋鑑定は一切おこなっていません。

古物商は、警察と連携して盗品や偽物など不正品を、世の中への流通防止を図ります。真贋鑑定は、非常に繊細な判断業務ですから、無責任な対応はできません。

なんでも100%正しく真贋鑑定してくれる万能業者は存在しません

真贋鑑定は、ジャンルや作家ごとに鑑定機関が定められています。それほど、真贋鑑定は難しく、確実に真贋を判断できるとはいえないのが現実です。真贋の判定が大変難しく、容易ではありませんから、なんでも真贋鑑定できる万能鑑定機関は存在しないことは、明らかです。

フリマアプリやネットオークションで、正規品と判断できないような品物を出品する場合には、相応のリスクがあります。「鑑定料金が支払えないから」などの安易な理由で、偽物の疑いがあるものを出品するのは危険です。出品しないことをおすすめします。

なお、一般社団法人古物査定士認定協会は、現場(現地)でお客様との売買の際、押し買いなどをせず一般的な買取金額等を提示し双方合意のもと売買を行うことを主たる目的としています。改めて、当協会は、ブランド品、美術品、骨董品などの真贋鑑定を一切おこなっていないことをご了承ください。

参考資料

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