「下取り」には古物商許可が必要? 要否の基準を詳しく解説

さまざまな業界において実施されている下取り。下取りサービスの導入を考えている方も多いかもしれませんが、なかには古物商許可が必要な場合もあります。知らずに無許可で古物営業をおこなうと、重い罰則が科せられることもあるので注意が必要です。

そこで本記事では、古物商許可が必要な下取りと不要な下取りについて、詳しく解説していきます。

下取りとは

下取りとは新品を販売する際に、古い品物を引き取って新品の販売価格から値引きすることを指します。

古物営業法において、古物営業は「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」と定められています。古物営業をおこなう場合は、古物商許可を取得しなければなりません。

古物営業法の規定により、下取りも古物商許可の取得が必要です。しかし、特定の条件を満たした場合は、古物商許可は必要ありません。下取りの古物商許可の要否について、次項以降で詳しく解説していきます。

下取りに古物商許可が必要な理由

下取りに古物商許可が必要なのは、盗品の流通を防止するためです。古物営業法は盗品の流通防止や、流通した場合、どのように盗品が流れてきたのかを特定する目的で作られています。同法では、古物を売買する際に本人確認などを義務付けており、被害の早期発見や、盗品の流通を防ぐ対策をしていることが特徴です。

古物商許可がなければ、盗品であることを知った上で販売する業者や、盗む人間と協力して盗品を販売する悪質な業者が出てくる可能性も。以上のような理由から、古物の買取を許可制にすることで、盗品の売買や換金を防いでいるという背景があります。

下取りにおいても、犯人が盗品を下取り対象品として、店舗に持ち込む可能性があります。そのため、下取りにおいても「古物の買取」「古物と財産権の交換」にあたる場合は、古物商許可を取得しなければいけません。

下取りに古物商許可が必要な場合とは

下取りに古物商許可が必要な場合は、以下の通りです。

  • 下取り対象品の値引き額を増減させる場合
  • 値引きではなく別のものと交換する場合

順番に見ていきましょう。

下取り対象品の値引き額を増減させる場合

一般的に品物は、状態がよいものや新しいものの場合、状態が悪いものや古いものと比較して価値が高くなりやすいもの。しかし、下取り対象品を査定し、種類や年式、状態などを考慮して値引き額を変える場合は、古物の買取をおこなっていると見なされます。

詳しくは後述しますが、古物商許可を得ずに下取りサービスを導入する場合は、値引き額は一定にしなければなりません。下取り価格を増減させたいと考えている場合は、古物商許可が必要です。古物商許可を持たずに下取り価格を変えると、法律違反となるため十分に気をつけましょう。

値引きではなく別のものと交換する場合

値引きではなく、財産権に値するクーポンやポイントと交換する場合も古物商許可が必要です。また、たとえ一律の金額のクーポン券やポイントの付与であっても、古物と財産権の交換にあたるため、古物商許可を取得する必要があります。財産権に値しないクーポンの例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 使用できる範囲が限られている
  • 本人のみしか利用できない(譲渡不可)
  • 金銭的価値がない
  • 金銭的価値が非常に小さい
  • 使用できる期限が短い

しかし、クーポン券が財産権に値するかしないかといった判断は、それぞれの事例によって異なる可能性があります。財産権に値しないクーポンなのか、そうでないかの判断がつかない場合、所轄の警察に確認してみてください。

古物商許可を持たずに下取りした場合の罰則

上記の例において、古物商許可を持たずに下取りした場合、古物営業法違反の「無許可営業」になってしまいます。違反した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは両方を科せられる可能性があるので、十分に気をつけてください。

無許可営業は古物営業法違反のなかでも、最も罰則が厳しいです。下取りの古物商許可の要否は、少し複雑で分かりにくい部分もあります。知らず知らずのうちに法律違反とならないよう、十分に気をつけましょう。

下取りに古物商許可が不要な場合とは

続いて、下取りに古物商許可が不要な場合を見ていきましょう。下取りに古物商許可が不要な場合は、以下の通りです。

  • 自社商品の下取りのみを行う場合
  • 「サービス」としての値引きに該当する場合

それぞれについて詳しく解説していきます。

自社商品の下取りのみをおこなう場合

古物営業法では、「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行なう営業は許可を要しない。」と定めています。したがって、自社商品のみを直接販売した相手から下取りする場合は、一律料金でなくとも古物商許可は必要ありません。

しかし、直接販売した相手が第三者に転売し、第三者から買取をする場合は、自社が販売した商品であっても古物商許可が必要です。

また、下取り対象品のなかに、自社が直接販売したもの以外がある場合も古物商許可が必要なので、気をつけましょう。古物商許可が不要なのは、自社商品の下取りのみをおこなう場合のみです。間違えないように注意してください。

「サービス」としての値引きに該当する場合

警察庁の見解では、「サービス」としての値引きと判断できる場合、新品の販売とともにおこなわれる下取り行為は古物営業に該当しない、としています。サービスとしての値引きに該当する場合として、警察庁は以下のように回答しています。

“新品の販売に伴う下取り行為が、次の要件を全て満たす場合は、当該取引は「「サービス」としての値引き」に該当し、古物営業に当たらない。
(1) 形式的要件
下取りした古物の対価として金銭等を支払うのではなく、販売する新品の本来
の売価から一定金額が差し引かれる形での経理上の処理が行われていること。
(2) 実質的要件
ア 下取りが、顧客に対する「サービス」の一環であるという当事者の意思がある
こと。
イ 下取りする個々の古物の市場価格を考慮しないこと。(警視庁「警察庁丁生企発第199号」)”

それでは、「サービス」としての値引きにあたる例として、家電量販店の下取りキャンペーンを例に具体的について考えていきましょう。

たとえば、冷蔵庫の下取りをする際、状態や型式などを考慮せず、一律の金額で値引きをおこなう場合は、「サービス」としての値引きにあたります。

しかし、状態や型式などによって下取り価格を変える場合は、実質的要件イの「古物の市場価格を考慮しないこと」から外れてしまいます。この場合は古物営業をおこなっていると判断され、「サービス」としての値引きとは見なされません。

古物営業許可を持たずに下取りサービスを導入する場合は、形式的要件と実質的要件から外れないよう、十分に気をつけてください。

古物営業と「サービス」としての値引きの違いとは

古物営業と「サービス」としての値引きは、目的や取引方法などに大きな違いがあります。

古物営業は中古品の売買自体が目的です。しかし、「サービス」としての値引きは顧客サービスの一環であり、中古品の売買を目的としたものではありません。また、古物営業では、市場の需要や状態などによって買取価格が変動するのに対し、「サービス」としての値引きの下取り価格は一律です。

うっかり無許可で古物営業をおこなうと、重い罰則が科せられることもあります。下取りサービスを導入したいと考えている場合は、それぞれの違いをきちんと理解するようにしましょう。

携帯会社の違反事例

携帯会社において、実施していたスマホの下取りが古物営業法違反のおそれがあるとして、警察庁から指摘を受けたことがあります。違反しているとされたのは、iPhoneの型番や容量の違いで割引額を変えていたためです。

この事例は、「サービス」としての値引きの実質的要件から外れている例です。古物商許可を得ない場合は、形式的要件と実質的要件から外れていないかしっかりと確認しておきましょう。

下取りには古物商許可が必要な場合もある! 違反しないように気をつけよう

下取りはさまざまな業界で取り入れられていますが、古物商許可が必要な下取りもあります。下取り価格を増減させる場合、クーポン券やポイントと交換する場合は古物商許可が必要です。

古物商許可を得ずに下取りサービスを導入する場合は、「サービス」としての値引きの形式的要件と実質的要件を満たす必要があります。古物営業法に違反しないよう、2つの要件を満たしているか必ず確認するようにしましょう。

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