【リサイクルショップの倒産傾向】悪質業者は淘汰される時代

古物商業界では、査定士や鑑定士を名乗り適正価格ではない金額で買い取ったり、貴金属を装飾雑貨(偽物)として鑑定する悪徳業者が増加しています。それだけでなく、押し買い等、消費者が依頼していない商品を無理やり提示させて買い取りする事件が横行し、古物商に関するトラブルが多く消費者センターに寄せられています。

しかし、紛い物や盗品が混ざりやすい古物を扱う以上、古物業界は健全でなければなりません。近年のリサイクルショップの倒産傾向を見ると、悪徳業者は今後ますます淘汰されていくと考えられるでしょう。

リサイクルショップを経営した際の年収

フリーランス、リモートワーク等の多様な働き方が選択できるようになった現在、自分の好きなものに囲まれ、縛られることなく自分の裁量で行えるリサイクルショップの経営に憧れる人が少なくありません。

リサイクルショップは仕入れと販売のセンスが非常に求められる職種であるため、その収入は「人それぞれ」としか言えませんが、年収が300万円も満たさず、2〜3年で閉業してしまうことも少なくありません。しかし、逆に年収1000万円を超えるケースも存在します。

雇われの場合にはある程度、年収相場というのが見えてきます。大手フランチャイズを経営する場合には、立地等の諸条件により様々ですが、250万〜300万円程度。センスで高収入のチャンスがある上に、経費や固定費を浮かせることで、より多くの年収を期待することができます。

雇われ店長の場合には、全国チェーンで400万〜450万程度、地域チェーンで350万〜400万円程度、地方で250〜350万円程度と考えられています。リスクが少ない分、自分のスキルで高収入を目指すことは難しくなるかもしれません。

リサイクルショップの倒産が急増

しかし、参入が増えているからといって、利益が出やすい業種というわけではありません。2018年度の帝国データバンクの「中古品販売業者の倒産動向調査」によれば、中古品販売業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は38件となり、2017年(30件)を上回り、2年連続で倒産は過去最多を記録しました。

負債額別でも、「5000万円未満」が29件(構成比76.3%)で最多を記録し、小規模企業が多く倒産しています。内訳として、破産が36件、特別清算(清算の遂行に著しい支障を来すべき事情又は債務超過の疑いがある場合に、利害関係人の申立てにより開始される特別な清算手続)が1件、民事再生(民事再生法に基づく裁判手続き)が1件となっています。

参考文献

帝国データバンク.“中古品販売業者の倒産動向調査(2018年)”.帝国データバンク.更新日不明.2020-08-25最終閲覧.
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p190104.html

倒産傾向・倒産しないための注意点

倒産の背景には、「メルカリ」「ヤフオク!」等の個人間取引が容易なフリマアプリの登場によって、古物商業界は冷え込みが挙げられます。顧客や売買するための商品がフリマアプリに流れ、経営が悪化して破産するリサイクルショップは少なくありません。

その背景には、「安く買いたたいている」「大掃除で処分する程度の恩恵しかない」「消費者を利用して儲けている」という消費者側の不満が多くあります。

個人間取引によって、自分の決めた価格で売買することができ、市場価格で容易に売ることができるようになったため、フリマアプリに消費者が流れていくのは自然なことと言えるでしょう。

さらに、これまで、押し買いや適正でない金額で買い取ってきた悪徳業者は、フリマアプリの登場により消費者が適正価格を知る機会を多く得たばかりでなく、一層、消費者から無用の、煙たがられる存在になったといえます。

つまり、悪徳業者は淘汰される時代になってきたと言えるでしょう。リサイクルショップとして生き残るには、消費者から信頼感を獲得しお互いに納得のいくような取引をしていくよう努めることが重要になるでしょう。

法律違反による取り締まりも強化 逮捕事例

転売等による古物営業法違反による逮捕事例は後が絶えないですが、過去には古物商許可を得ているにもかかわらず、法律違反によって逮捕されたケースもあります。具体的な事例を確認していきましょう。

借金返済や輸出の受け入れ先がなくなったと見られるケースなど、経営悪化が法律違反につながり逮捕されたのではないかと考えられる事例が多く存在しています。

①チケットキャンプ

チケット売買サービスの「チケットキャンプ」はサイトの表示について、無断でタレント名を使用し事務所からの抗議を無視をしたり、100万円という高額チケットを販売するなどして、商標法違反・不正競争防止法違反の容疑で業務を停止。2018年にサービスが終了しました。

②とあるリサイクルショップ

2019年には、古物商人が、顧客から1,450万円での販売を委託され預かっていた日本刀を、借金返済をする都合で現金を用意する必要があるために1,000万円で勝手に質屋に売却し、業務上横領の容疑で逮捕されたケースもあります。

ニュースで上がったのは上記の事件ですが、所在がわからなくなった刀は多数あり、2011年から預かった刀が転売されていたことが明らかになりました。被害総額は推定2億円とのことです。

③Best

2020年、金属類やプラスチックや廃家電製品などの買い取り、輸出を行なっていた埼玉県熊谷市御正新田のリサイクル会社「Best」社長は、廃プラスチックなどの産業廃棄物の適正処分などを求める件の改善命令に期限までに従わず、産業廃棄物(計約3,700立方メートル)を長期間にわたって放置していました。

そのため、業廃棄物処理法違反(改善命令違反)の容疑で逮捕。リサイクル資源の主な輸出国であった中国で2013年から輸入規制が厳しくなり、2018年以降に受け入れ禁止となったことを踏まえ、埼玉県警察は、受け入れ先がなくなって山林に放置されたのではないかと見ています。

まとめ

古物商市場を健全化するために、警察署等を中心に取り締まりが強化されています。そのため、チケット転売や 1回的ではない商品の売買などにより古物営業法違反で逮捕されるだけでなく、悪徳業者が逮捕される事例が多く存在します。

また、仮に捕まらなくとも、押し買いなど消費者の信用を損ねたり消費者にとって不利な売買をすることで、結果的に顧客がフリマアプリ等に流れて経営悪化してしまい、倒産してしまうケースが増加しています。

古物商許可を得て事業を行なっている事業者としての自覚を持ち、健全な営業を古物商人の皆様が行なっていくことを願っています。

なお、古物査定士認定協会では、健全な営業に努める古物事業者の一助となるべく、資格取得に当たって「古物の買取り時に必要なマナーを含む健全な査定」を学ぶ場を設け、古物査定士の資格証明を携帯することで悪徳業者と資格取得者を明確に区別を図り、消費者の信頼を得ることができるよう資格を策定しています。よろしければご活用ください。

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古物査定士資格取得に関する問い合わせ窓口
(当面の間は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、資格試験を郵送で行うこととします)

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