近年、少子高齢化や働き方改革の推進、デジタル技術の進歩など、ビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。今あるコストを減らし、企業が生き残るためには、「業務改善」を積極的に進め、生産性と効率を向上させることが不可欠です。
「業務改善を実行したいが、具体的な方法や手順が分からない」
「具体的に何から始めていいのか迷っている」
「参考になるヒントやアドバイスが欲しい」
このように業務改善への第一歩を踏み出せない方や企業も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、業務改善の全体像を分かりやすく解説するとともに、成功事例や参考資料も紹介していきます。
業務改善とは
業務改善とは、ムダ・ムラ・ムリをなくし、効率的な業務プロセスを構築することで、品質向上、コスト削減、納期短縮を実現する活動です。生産年齢人口の減少など、政府資料からも、業務改善の必要性が示唆されています。
総務省の資料によると、少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれています。
生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題を解消するためにも、業務改善による生産性向上が一層重要となります。
業務改善に重要な「QCD」とは
QCDは業務改善における重要な指標です。
QCD
Quality(品質) | 製品やサービスの品質向上 |
Cost(コスト) | コスト削減 |
Delivery(納期) | 納期短縮 |
これらの要素をバランス良く改善することで、顧客満足度向上と企業競争力強化に繋げることができます。
業務改善の手順
業務改善を成功させるためには、以下の6つのステップを踏むことが重要です。
①業務の可視化を行う
まず、現状の業務内容を詳細に把握する必要があります。そのためには、業務フローチャートやマトリックスなどを活用し、見える化することが重要です。具体的には、以下のような方法があります。
- 業務内容を細かく分解し、それぞれの作業にかかる時間や担当者を記録する
- 業務フローチャートを作成し、業務の流れを可視化する
- 業務マトリックスを作成し、業務内容と課題を整理する
②課題を整理する
業務を可視化したら、課題を整理します。課題を洗い出す際には、5W1H(What、Why、When、Where、Who、How)のフレームワークを活用すると効果的です。
③方針を決定する
整理した課題に基づいて、業務改善の方針を決定します。方針を決定する際には、SMARTな目標を設定する必要があります。SMARTとは5つの英単語の頭文字を並べた言葉で、意味は以下の通りです。
Specific(具体的に)
目標は明確で具体的に設定することが重要です。あいまいな目標では各人によって解釈が異なってしまうため、行動に繋がりません。
たとえば、「残業時間を現状の60分から30分以内になるようにする」という目標を立てれば、どのようにして効率よく仕事を進めていくかといった、業務改善に繋がる行動に移すことができます。
Measurable(測定可能な)
数値で測ることができる定量的な目標を設定してみましょう。たとえば、「一定量のデータ入力に60分かかっていたが、1か月以内に50分で入力できるようにする」といったように、「なにを、いつまでに、どうする」という具体的な目標を立てると、達成するための具体的な行動に繋がります。
Achievable(達成可能な)
達成が難しい非現実的な目標を設定すると、モチベーションやパフォーマンスが低下してしまうおそれがあるため、注意が必要です。
Relevant(関連性のある)
たとえば、目標達成することでインセンティブを付与するといった個人の利益に繋げることで、従業員のモチベーション向上を期待できます。
Time-bound(期限付き)
期限のない目標は、行動を先延ばししてしまう要因になりかねません。期限を設定することで集中力アップにも繋がり、業務のスピードも上がります。
実行することが難しいような極端に短い期限を設定してしまうと、従業員のモチベーションが下がってしまうため、集中して作業ができる程度の設定期限にしましょう。
④実行計画策定をする
方針に基づいて、具体的な実行計画 を策定します。実行計画には、以下のような内容を盛り込む必要があります。
- 改善活動の具体的な内容
- スケジュール
- 評価基準
- 担当者
- 予算
⑤計画を実行する
策定した実行計画に基づいて、改善活動 を実行します。実行にあたっては、関係部門への周知徹底を図っておくことも大切です。定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて計画の修正ができるようにしましょう。
⑥効果検証や各所へのヒアリングを行い改善する
改善活動の実施後には、効果検証 を行い、目標達成度を確認する必要があります。効果検証の結果に基づき、必要に応じて改善を行いましょう。効果検証を行う際には、以下のような方法があります。
- 事前に設定した評価基準に沿って、目標達成度を測定する
- 関係部門、関係者へのアンケート調査を実施する
- 業務データを分析する
「改善の8原則」とは
業務改善を成功させるためには、「改善の8原則」 を意識することが重要です。
改善の8原則
①現状把握 | 現状を正確に把握する |
②課題の特定 | 課題を明確にする |
③目標の設定 | 具体的な目標を設定する |
④原因の分析 | 課題の原因を分析する |
⑤対策の立案 | 課題解決のための対策を立案する |
⑥実行 | 対策を実行する |
⑦効果検証 | 対策の効果を検証する |
⑧継続改善 | 改善活動を継続的に行う |
業務改善をする上で便利な参考資料
内閣人事局「業務の抜本見直し推進チーム」が各府省の業務見直しの手引きとして作成した資料が、業務改善をする上で参考になりますので紹介します。
「業務見直しの進め方 Ver1.0」
若年人口が減少する中、行政の質の向上と優秀な人材確保を図ることが重要な課題となっていることから、国家公務員の効率良い業務の取り組み方針について記載されています。
「より良い業務見直しに向けた助言ポイント Ver1.0」
「業務見直しの進め方 Ver1.0」に基づく「内閣官房チームから各省チームへの助言」の一環として、各局各課における、より良い業務見直しを促し定着させる目的で作成したものです。
「業務見直し 着眼点のヒント集 Ver2.1」
各府省等が実施している業務を選び、見直しのきっかけとなり得る内容を取り出して分類した資料です。Part1「テーマ別業務の見直し例」とPart2「作用別の業務見直し例」の構成になっており、多くの場面で活用できる気付きのヒント集です。
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