古物商とSDGsの関係性・取り組み例

古物商とSDGsは深く関わりがあります。最近では、貢献するために古物商許可を取得する人も増えてきました。持続可能な社会を実現するために、まだSDGsについてあまり知らない人も、これを機に考えてみてはいかがでしょうか。

SDGsとは?

近年よく耳にするSDGsという言葉は、持続可能な開発目標の略称です。

地球上に住むすべての人に関係する目標であり、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための取り組みとして、2015年9月の国連サミットで採択されました。

持続可能とは、地球や社会の環境が未来に渡って継続・維持されることを指します。わかりやすくいうと、世界中にある環境問題や貧困、差別、人権問題などを解決してより良い世界を2016年から2030年までに目指そうということです。

具体的に17の国際目標が設定されており、その下にはさらに169の達成基準と232の指標が定められています。

(画像は国連UNHCR協会から引用)

SDGsの考え方

SDGsのもっとも要となる考え方は、誰ひとり取り残さないNo one will be left behindということ。人間(People)・地球(Planet)・豊かさ(Prosperity)・平和(Peace)・パートナーシップ(Partnership)という5つのPがSDGsの根本にあります。

「人々が尊重しあえる」「地球を環境破壊から守る」「全ての人が豊かな生活をおくる」「平和で公平な暴力のない世界」を市民や政府、国連機関など多様な関係者が参加するグローバルなパートナーシップにより実現を目指す考え方です。17の目標は、5つのPをより具体的に表したものです。

SDGsが注目されている理由

SDGsは、メディアだけではなく学校の授業の一環としても取り上げられるようになりました。なぜここまで注目されるようになったのでしょうか?

理由として特に大きいのは、世界的に貧富の差が広まっている点。そして温暖化や大気汚染、海洋汚染、森林破壊など地球の環境を脅かす問題が、年々深刻になっている点です。

このまま何もしなければ、決して遠くない未来に、地球は今より確実に住みにくい惑星になってしまうでしょう。各国の危機感が、近年SDGsが注目されるようになった理由と言えます。

古物商とSDGsの関係性

SDGsが目指す17つの目標すべてに古物商が関係するわけではありません。しかし、SDGsにより定められた17の目標のうち、複数の項目に関係があります。

古物商許可を取得してリサイクルショップなどを運営すること自体が、立派なSDGsへの貢献活動となっています。不用なものをゴミとして廃棄・処分するのではなく、資源の循環的利用が可能となる古物商。地球環境や資源を守り、地球の未来を維持するために役立っています。

そこでSDGsの17つの目標のうち、特に古物商と関係のある項目を取り上げます。

1.貧困をなくそう

貧困問題は、発展途上国はもちろんですが、国内でも直面している深刻な問題です。
貧困により、必要な物や欲しい物を正規の価格で購入できない人々も少なくありません。

古物商では、十分に使用可能な不要品を安く買取して、定価より安価で販売しています。古物商なら製品によっては、定価の1/10以下で購入が可能なこともあります。寄付とは違いますが、貧困により起こる「物を買えない」人々の手助けとなることもあります。

7.エネルギーをみんなに・そしてクリーンに

「エネルギーをみんなに・そしてクリーンに」は言葉だけでイメージしにくいかもしれません。地球上に住む人々が全員安心して使えるクリーンエネルギーを普及させること。そのエネルギーを誰でも低価格で使えるようにする目標です。

目標ができた背景には、地球温暖化の問題があります。地球温暖化の原因は、二酸化炭素やメタンなどの温室ガスです。温室ガスは、新品製品を産み出すさまざまな段階で発生してしまいます。

そのため古物商を取得しておこなうリユース事業は、二酸化炭素などの温室ガスの削減に貢献できます。

11.住み続けられるまちづくりを

住み続けられるまちづくりの具体的な達成目標の中には以下があります。

「11-6.2030年までに、大気の質やごみの処理などに特に注意をはらうなどして、都市に住む人(一人当たり)が環境に与える影響を減らす」

「11-b.だれも取り残さず、資源を効率的に使い、気候変動への対策や災害への備えをすすめる」(引用:日本ユニセフ)。

住み続けられるまちづくりのために解決しなければいけない問題のひとつに、大気汚染があります。大気汚染は健康に被害を与え、世界中の都市に住む90%の人が汚染された空気を吸い、数百万人が命を落としている現状があります。

大気汚染の原因のひとつが、工場からの煙です。古物商によるリサイクル・リユース推進により、工場からの煙を減少させることも不可能ではありません。

12.つくる責任つかう責任

複数あるSDGsの目標の中でも、特に古物商が貢献できるのがナンバー12の項目です。ものを生産・消費する活動は、地球にある資源やエネルギーを使用する必要があります。

しかし、資源には限りがあるため、生産者も消費者も地球の環境と人々の暮らしを守るためには責任のある行動をしなければいけません。また、資源の枯渇だけではなく、ゴミの問題もあります。

耐久消費財の頻繁な買い替えや過剰包装、物を大切にしないといった無責任な行動により、埋め立て地不足、不法投棄、焼却の際に発生する有害物質による環境汚染などの問題がおこっています。

SDGs.12の達成目標に以下などがあります。

「天然資源を持続的に管理し、効率よく使えるようにする」「2030年までに、ごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをして、ごみの発生する量を大きく減らす」(引用:日本ユニセフ

リサイクル・リユースは古物商の得意とする分野。本来捨てられ、ゴミとなるはずだった製品を次の消費者へ繋げることでゴミの量を減らすことができます。古物商は、限りある資源を有効利用でき、公害の防止にもつながります。

13.気候変動に具体的な対策を

近年、地球全体が異常気象に脅かされています。大きな原因として、地球温暖化が言われています。温暖化は、二酸化炭素などの温室効果の影響によるものです。

別の項目でも説明した通り、二酸化炭素は物を生産する過程でも大量に発生します。そのため古物商が実践する中古品、不用品、廃棄物のリサイクル・リユース事業は、温暖化対策への取り組みとして有効と言えます。

14.海の豊かさを守ろう

物の大量生産による二酸化炭素の排出は、海洋を酸性化する原因です。海洋が酸性化が進行すると、やがて海から貝が消滅してしまう可能性があります。もちろん貝以外の海洋生物にも良くない影響を及ぼすでしょう。

また、二酸化炭素などによる地球温暖化の影響により、海の生き物の住み家でもあるサンゴが絶滅に追い込まれることで、海の生態系に影響が出ています。

海の豊かさを守るためには、二酸化炭素をはじめ温室ガスの排出を減少する努力をしなければいけません。古物商の働きにより、過剰な物の生産を抑制することで、海の豊かさを守る手助けができます。

古物商としてSDGsへ貢献するための考え方

古物商としてよりSDGsへ貢献するには、3Rを意識して事業を展開することです。
3Rとはリユース・リサイクルに加えてリデュースのこと。古物商自体がリユース、リサイクルに貢献していますが、そこにゴミを減らすという意味のリデュースにも積極的に取り組むべきです。

例えば「過剰な包装は避ける」「買取時の段ボールはリサイクルして使用する」「商品の寿命を長くするために、点検・整備をおこなってから販売する」などがあげられます。

リサイクル品を販売しても、過剰な包装をしたり、すぐに壊れる商品を売っていては意味がありません。3Rを意識した考え方をすることによって、よりSDGsへ貢献できます。

古物商としてできる取り組み例

SDGsの目標を達成するために、古物商としてできる取り組み例を紹介します。

1.グローバルなネットワークの構築

古物商は、基本的に不用となった品を個人や法人から買取って販売する事業内容です。日本では買い手がつかないような製品でも、海外では重要のあるケースが少なくありません。

そこで古物商としてできる取り組みとして、グローバルなネットワークの構築があげられます。

日本では需要がなくても海外では重宝されるケースは、いくらでもあります。海外での販路を広げることによって、より古物商としての貢献度を高められます。

2.値段がつかないものを引き取り・寄付

次に一般的には値がつけられず買取できない製品を引き取り、必要な場所へ寄付する取り組みです。直接的な利益にはならない取り組みですがSDGsへ貢献できます。

3.ジャンク品を直してから売る

壊れていて使用できないジャンク品を直してから売るという取り組みも可能です。そのままでは売れない製品でも、手直しや修理をすれば買い手がつきやすくなり、ゴミにならずに済みます。

企業としてSDGsに取り組むメリット

古物商がSDGsに取り組むことは、企業としてもメリットがあります。

1.企業のイメージアップにつながる

今、世界中で注目されているSDGsは消費者の間でも関心を高めています。

消費者はリサイクルショップを利用する際に、複数社を比較する傾向にあります。少しでもSDGsに貢献するために、会社の在り方を見て利用する人もいます。

そのため、SDGsに取り組むことで古物商としてのブランディング力を高め、新しいビジネスチャンスを掴むことは重要です。SDGsへ貢献することで、企業価値を高めイメージアップにつながると考えられます。

2.ステークホルダーとのつながりを強められる

実際に最近では、投資家の間でSDGsが非常に重視されるようになっています。SDGsへ取り組むことは、企業と利害関係のある株主や消費者、取引先、金融機関などあらゆるステークホルダーとのつながりを強めてくれます。

これから先、SDGsに逆行するような企業は生き残りにくいと考えられます。事業の継続性が高くなるメリットもあります。

3.新たな市場機会に恵まれやすくなる

SDGsの経済効果は2030年までに年間12兆ドルと言われています。SDGsに企業として取り組むことで、新たな市場機会に恵まれやすくなると考えられます。

リユース・リサイクル業界は、これからも市場規模は拡大し、成長率もアップしていくと考えられています。それは参入者も多くなり、競争相手が増えるということ。

SDGsは、国内だけでなく国際的な活動ですから、取り組むことで国内外でのビジネスチャンスも広がると考えられます。古物商は海外にも事業のネットワークがあったほうが、確実に利益に繋がります。

企業としてSDGsに取り組む際に必要な準備

企業としてSDGsに取り組むのであれば、従業員全員が方針を理解し団結していなければいけません。会社の取り組みを全従業員に周知し、教育する準備が必要です。そのためにも、企業全体で取り組む課題と目標数値を準備段階で決めておきましょう。

循環型社会の貢献を考え古物商許可を取る人が増えている

今や有限な資源を循環的に使用し、将来に渡って持続的に使い続けていくことが求められています。

方法はさまざまありますが、古物商は、コストをあまりかけずに循環型社会への貢献が可能です。そのため、SDGsへの関心が高まる中で、古物商許可を取得する人が増えています。

▼健全な古物営業はSGDsへの取り組みだけでなく、消費者と公平な立場で買取することなども重要です。当協会では、健全な古物営業に向けた取り組み・資格交付をおこなっています。

古物査定士資格取得に関する問い合わせ窓口
(当面の間は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、資格試験をオンライン上で行うこととします)

(アイキャッチ画像は国連UNHCR協会から引用しています)

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