古物商を営んでいる方は、本人確認の際に健康保険証を提示される機会も多いでしょう。古物取引の本人確認に健康保険証を用いる際は、取扱いを誤ると法に触れる可能性があるため、注意が必要です。
「健康保険証を提示された際の注意点を知りたい」
「健康保険証を用いた本人確認の具体的な対処法を知りたい」
といった方もいるでしょう。そこで本記事では、健康保険証を用いた本人確認の注意点、具体的な対処法などについて詳しく解説しています。健康保険証を提示される機会が多い方などは、ぜひ参考にしてください。
古物商にとって取引相手の本人確認はとても重要
取引相手の本人確認は古物商の防犯三大義務のひとつであり、欠かすことができない重要な業務です。本人確認をおこなう際は、住所、氏名、職業、年齢を確認する必要があります。
本人確認業務を怠った場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくはその両方に科される可能性があるため、十分に気をつけましょう。
“第十五条古物商は、古物を買い受け、若しくは交換し、又は売却若しくは交換の委託を受けようとするときは、相手方の真偽を確認するため、次の各号のいずれかに掲げる措置をとらなければならない。
一相手方の住所、氏名、職業及び年齢を確認すること。(以下略)”(古物営業法第15条)“第三十三条次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一第十四条第三項、第十五条第一項、第十八条第一項又は第十九条第三項若しくは第四項の規定に違反した者”(古物営業法第33条)
本人確認が必要な場合と不要な場合について
古物商の防犯三大義務のひとつである本人確認ですが、免除される場合もあります。本人確認が必要な場合と不要な場合について、順番に見ていきましょう。
本人確認が必要な場合
古物営業法の第15条において本人確認が必要な場合について明記されています。本人確認が必要な場合は以下の通りです。
- 古物を買い受けるとき
- 古物を交換するとき
- 古物の売却もしくは交換の委託を受けるとき
上記の取引をおこなう際は本人確認が必要ですが、一定の条件を満たすと本人確認が不要になります。次項で詳しく解説します。
本人確認が不要な場合
本人確認が不要な場合は以下の通りです。
- 買取価格が1万円未満のとき(一部の取引を除く)
- 古物を直接売却するとき
- 自身が直接売却した古物を相手から買い戻すとき
買取価格が1万円未満の場合は、原則として本人確認が免除されます。しかし、一部の古物を取引する際は、1万円未満の取引であっても本人確認が必要です。
1万円未満の取引でも本人確認が必要な場合
以下の古物を取引する際は、1万円未満であったとしても本人確認は免除されないので注意しましょう。
- 自動二輪車および原動機付自転車
- 自動二輪車および原動機付自転車の部品
- 書籍
- CD、DVD、BDなど
- ゲームソフト
自動二輪車および原動機付自転車の部品に関しては、ねじ、ボルト、ナット、コードといった汎用性がある部品は含まれません。
上記の古物が買取価格によらず本人確認が義務付けられているのは、万引きや盗難被害が多いためです。上記の古物を取引する際に、うっかり本人確認を忘れてしまわないよう注意しましょう。
本人確認に使える身分証とは?
本人確認に利用できる身分証は、以下のようなものが挙げられます。
- 運転免許証
- 運転経歴証明書
- パスポート
- マイナンバーカード
- 各種健康保険証
- 住民基本台帳カード(写真つきのもの)
- 福祉手帳 など
上記に挙げた身分証のなかで、健康保険証の提示を受ける際は法律がからんでくるため、とくに注意が必要です。健康保険証の提示を受けた際の注意点と対処法について、次項以降で詳しく解説していきます。
本人確認として健康保険証の提示を受ける際は注意が必要
本人確認のために健康保険証の提示を受けた際は、必要な情報を書き写したり、コピーを取ったりする必要があります。このような場合、記号・番号・枝番・QRコード・保険者番号が見えない状態で書類の保管が必要です。
ここでは、健康保険証を用いた対面買取と非対面買取の注意点について見ていきましょう。
対面買取の場合の注意点
対面買取で原本の提示を受ける際は、記号・番号などを書き写さないように気をつけてください。コピーを取る場合は、記号・番号などがうつらないよう付せんなどで隠してから、コピーを取るようにしましょう。
付せんで隠すのが面倒という場合は、コピーを取ったあとに該当箇所を黒のマジックなどで塗りつぶすなどして、読み取れないようにしても問題ありません。記号・番号などが読み取れないよう、なんらかの対策を必ずおこなうようにしてください。
非対面買取の場合の注意点
非対面買取の場合、本人確認のために健康保険証のコピーの送付を受けることもあるでしょう。健康保険証のコピーの送付を受ける場合は、記号・番号などを確認できない状態で送付するよう、事前に取引相手に伝えるようにしてください。
もしも記号・番号などがコピーされていた場合は、黒のマジックなどで塗りつぶし、読み取れないようにしてから保管するようにしましょう。
非対面買取における本人確認方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。誤った方法で取引している事例も多く見受けられるため、間違いがないか、いま一度ご確認ください。
健康保険証を提示された際の古物台帳への記入方法
古物台帳には取引年月日、取引区分など記載すべき多くの項目があります。そのなかのひとつである取引相手の身分を確認した方法を記入する際にも、保険証を用いた本人確認では注意が必要です。
以前は、健康保険証の記号・番号も書く必要がありました。次項で詳しく解説しますが、健康保険法の改正により、現在では控えることができません。
したがって、取引相手の身分を確認した方法を記載する際は記号・番号ではなく、「保険者の名称」や「保険証の発行機関」を記入するようにしてください。健康保険証を提示された際に、以前の習慣で記号や番号をうっかり記入してしまわないように気をつけましょう。
番号を控えることが禁止になったが背景は? 対策が必要になった理由
健康保険証の番号などを控えることが禁止となったのは、2020年10月に健康保険法が改正されたためです。
従来は世帯ごとに付与されていた被保険者番号ですが、保険者記号・番号を個人ごとに付与する個人単位化がされるようになりました。個人の特定が容易になることから、健康保険証の記号・番号などは個人情報として扱われるように。
これにより健康保険法が改正され、個人情報となった保険者記号・番号などの取得が禁止された、という背景があります。
健康保険証の取扱いを誤ると法に触れる可能性も
ルールを無視して健康保険証を本人確認書類として扱うと、健康保険法違反とみなされる恐れがあります。違反行為に対しての厚生労働大臣からの勧告や命令に従わない場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があるので、十分に気をつけてください。
古物商の取引には細かな部分や複雑な部分もあり、すこし混乱しやすいかもしれません。しかし、「知らなかった」「よく分かっていなかった」では済まされないので、きちんと理解しておきましょう。
古物買取で健康保険証の提示を受けるときは注意!法に触れないよう気をつけて
古物商には欠かすことができない重要な業務である本人確認。健康保険証を提示された際は、正しい方法で取扱う必要があります。
対面買取で健康保険証を提示された際は、記号・番号などを書き写さないように気をつけましょう。コピーをとる際は、付せんなどを貼って該当箇所がコピーされないようにするか、コピー後に記号・番号などを塗りつぶすなど、読み取れないようにする対策が必要です。
また、非対面買取で健康保険証のコピーを受けるのであれば、記号・番号などを確認できない状態で送付するよう、事前に取引相手に伝えておくことが大切です。
健康保険証を用いた本人確認の方法をきちんと理解し、法に触れないよう正しい方法でおこなうようにしましょう。
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