先日、「古物商の営業所はレンタルオフィスやバーチャルオフィスでも大丈夫ですか?」という質問をいただきました。古物商の営業所として、どのようなところを用意したら良いか改めてご紹介します。
古物商における営業所とは?
古物商は始める為に許可申請を行い、許可を得る必要があります。この時点で資金、人、場所を確保しなければなりません。古物商許可申請と開業のタイミングはどちらか先か明言されていませんが、古物商許可申請が通らないと開業できないので、許可・不許可がわかる40日前後までに開業届も出しておく方がスムーズです。
営業を行う上で必要になる場所というのは、営業所という業務を行う所を意味し、事務手続きや古物を買い取る場所のことです。この場所には要件があり、これをクリアできなければ許可が取れません。例えインターネット売買に限定していても、営業所は必要になります。
古物商許可申請書の中には、営業所の「あり」「なし」を記載するところがありますが、現状、まず「なし」を選択すればほぼ許可はおりないのが実情であり、「なし」の項目があるからといって、営業所を用意しないわけにもいきません。
営業所の要件
警察署の見解による営業所の要件をクリアしなければならないため、警察へ確認するのが最も確実と言えます。
1.条件を満たす管理者がいる
古物商を営む上で管理者というのはとても大事なポストであり、重要な役割を担っています。管理者にも、欠格事由に当てはまっていないか、すぐに駆けつけられる距離か、勤務時間は十分に取れるか、古物営業法の知識を十分に持っているか等の条件が求められます。
よって複数の営業所を持つ場合でも、管理者は営業所ごとに必ず1人必要になります。営業所は同じ都道府県なら設置数に限りがなく、複数の営業所の管理者を兼任することはできません。
例外として、同じ敷地内に2つの営業所を持っている場合は兼任できることもあります。また、事業主が管理者を兼任すること自体は禁じられていませんので、管理者を兼任することはあり得るでしょう。
営業所が他県にまたがる場合、以前は其々の都道府県ごとに許可を取らなければなりませんでした。しかし、法改正で「許可単位の見直し」がされたことで、事業者側が主たる営業所を定め、その主たる営業所を管轄する公安委員会の許可のみ得れば良い形へと変更されています。
2.使用権限があって、周辺の関係者の理解を得ている
営業所として認められるには、その場所を使用してよいという権利が必要です。持ち家であっても、自分ではなく親や夫・妻に所有権がある場合、許可を求められることがあります。
また、賃貸物件だけでなく、自社物件等であっても、賃貸契約書や建物の登記簿謄本、売買契約書、古物営業としての利用が認められているとわかるもののコピー等の提出が求められることがあります。賃貸契約書の重要視される部分の例として、以下が挙げられます。
使用目的
使用目的が事務所となっている場合問題ありませんが、住居専用となっている場合は営業所としては認められません。但し賃借人から古物商の営業所として使用承諾書を得ることができるなら、住居専用であっても受理して貰える可能性が高いです。
契約者
その物件を貸している人、借りている人が確認されます。この確認は、使用承諾書を貰うべき相手が誰なのかということと、古物商許可の申請者と借りている人が同一人物であるかどうかということです。別の人物の名前があると受理してもらえません。
例えば、持ち家であっても夫や妻、両親などが場合にも使用承諾書を得ることが必要となってきます。
契約期間
契約期間が余り短いと受理されるのは難しいとされています。もしも賃貸借契約期間が満了となる場合は、更新する意思があることを証明することが必要があります。自動更新の場合もその旨を伝える内容の書面を添付することで受理は可能となります。
3.営業所が独立性を持っていること
独立性とは独立管理できる構造のことで、他社と共同使用している場合は、どの部分が申請したスペースなのかを明確にしておかなければなりません。同じフロアに複数の法人が入居していることも少なくないからです。
自宅の場合においても、家族数人がネットショップを別々に運営するのは難しいとされます。其々独立した空間を必要とするためで確保は困難だからです。
4.レンタルオフィスの利用は可能
賃貸借契約書を提出することで、レンタルオフィスを営業所として使用することが可能です。
只ある程度の継続が求められているため、数ヶ月以上の賃貸借契約期間が必要となります。これは都道府県によって変わってくるので事前に確認しておくのが望ましいでしょう。
品目によって、十分に置くスペースが取れているかという点も注目されます。
使用承諾書の書き方
営業所の所有者が自分のものではない場合に、使用承諾を得ている旨を「使用承諾書」という形で残し、古物商許可申請時に提出する必要があります。書式が定まっておらず、必要事項を記載する形になるため、書き方例をご紹介します。
古物商の営業所として認められないケース
上記で古物商の営業所としての要件を述べましたが、その要件を満たしていないと営業所としては認めて貰えません。具体的な例をご紹介します。
持ち主から許可が得られない場合やトラブルのリスクが高い場合
自社・持ち家ではない場合に、審査のハードルが高くなります。求められるものは所轄の警察によって異なりますが、東京都の場合に賃貸で審査を通すのはやや困難だという話を聞きます。
その理由は、特にマンション、アパートなどの共同住宅ではトラブルが生じる可能性が高いためです。公営住宅の場合は、営業行為を規約で禁止しているため、承諾を得られることはまずないと考えられます。また、学生寮も居住期間が限定されてしまうため、許可は下りないだろうことが考えられます。
自宅が使用賃借物件(賃料無し)で必要資料が得られない場合
所有者の好意によって賃料なしで貸して貰っている場合もありますが、このようなケースでは、貸主の建物登記簿謄本、無償での使用に関する契約書、使用承諾書の提出がなければ認めて貰えません。
自宅が自己所有でも登記簿謄本などが用意できない場合
この場合はスムーズにいきそうに見えますが、本当に所有しているという証拠がなければ認められません。つまり登記簿謄本などの添付が求められるということです。又既に家族が同じ建物で古物商を営んでいる場合は、独立性が求められるため受理してもらえないケースもあります。事前に警察署で相談するのが望ましいでしょう。
レンタルオフィスで独立性がない場合や長期契約でない場合
古物商許可を取得するには営業所を必ず設けなければならならないため、費用の面などからレンタルオフィスを借りる人も少なくありません。
レンタルオフィスは様々で、簡単に区切られただけのスペースなどは独立性があるとは言えません。従ってこの場合は認めて貰えないことになります。
又契約期間も大事で、長期契約をしていなければ認めて貰えないケースが多いです。短期契約にすることで信用性がなくなります。只この場合も、完全な個室であるレンタルオフィスなら認めて貰える可能性は大きいです。
レンタルスペースを古物商の営業所にしようとする場合
レンタルスペースとは、会議や研修、イベントなどの用途で使用することが多く、ほとんど時間ごとの料金設定になっています。これは営業所としては認められません。
バーチャルオフィスを古物商の営業所にしようとする場合
バーチャルオフィスというのは、住所、電話番号等のみを借りて、業務は別の場所で行うスタイルを言います。電話は転送というのがほとんどで、実態の備えていない架空の空間とみなされます。こちらも、店舗は必要でなくても営業所の役割が求められる以上架空は認められません。
まとめ
警察は建物の外から物件を確認することが多く、室内確認をするのは稀です。しかし、地域によっては、立入検査があったり予告なしに営業所を訪問することもあり得ます。
その際に古物台帳の有無のチェックや調査などが実施されることが少なくありません。警察署によっては、見取り図や外観の写真、営業所の賃貸契約書、信用承諾書などの提出を求めるケースもあります。
古物商に関しては、所轄の警察署の判断が大きいので、困った時は所轄の警察に問い合わせてみましょう。
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